『 daaw版 タイの僧院にて (続アラタノオー) 』
ガンチャナブリからの列車は、夕刻のバンコクノイ駅へと滑り込んだ。
あ、なんか『うおのめ文学賞』に感化されてるかもしれない…。芸風変わっちゃったよ、オイ。
ってんで、いつも通りに書くと、ガンチャナブリで、日本人のお坊さん(タイ仏教の)とメーチーに会ったんだよね。
で、帰りが一緒になって、今しも西日を一杯に受けて煌くワット・ポーのチェディー(仏塔)を背景にしたトンブリ側の駅、バンコクノイに…
アレェ! また戻ってるよ、オイ!
駅でお別れする時、アラタノオーは言ってくれた。
「今度、是非、お寺の方に来て下さい」
でおいらは、すかさず、
「3日後におたずねしていいですか?」
って約束を取り付けて、こうして来てる訳だ。(って、もう来てるのかい!)(あー、やっぱり芸風変わっちゃったよ…)
少し手前でトゥクトゥクを降り、門前町っぽいたたずまいの町並みを行くと、何やらラウドスピーカーから大きな声が…。
独特の節回しで次々と読み上げられてるのは、所々に「5000バーツ」などの金額が入るところから、寄進者を称えてのものだろう…。
それはともかく、ワット・パクナームは名刹らしかった。
一端をチャオプラヤー川の支流に接した広大な敷地。本堂の他に、3つ4つの大きな建物がある。
宿坊らしきところはすぐに分かった。
玄関を入って行くとなんと、青い目をした修行僧が居て、来意を告げると、どうやらアラタノオーを知らないようで、入り口に近い部屋に首を突っ込んで聞いてくれている。
代って出て来たタイ人のお坊さんは、30台半ばと思わせたが、充分に修行を積んだ指導的立場にある人のようだった。
「アラタノオー師を訪ねて来たのですが…」と言うと、厳しそうに見えた顔を綻ばせ、「よくお越しになりました」と先に立ち、二階へと上がり、50メートルほどの廊下の中ほどの部屋の前に立つ。
「アラタノオー。お客さんが来ました」
アラタノオーは、なんか慌てた風に暖簾(だったと思うがなぁ…)を掻き分けて出て来た。
「あ、あの時の…」
「はい。来ちゃいました」
あ、この調子だとまたコボレるので先を急ぐ。
ま、こんな調子で、おいらの『タイの僧院にて』は始まったのだけど。
一服したあと「副住職に会わせる」と言うので、大きな建物の二階に行ってみる。
アラタノオーが畏まって床に頭をつけ三拝するのに合わせていると、
「よう来られましたな」と日本語が…。
なぁーんだ、副住職は日本人なんだー。っても、聞いてみると、タイ生まれで国籍は二重国籍。実は日本語は少々おぼつかないんだとか。
瞑想の大家としての名声高く、サンガ(仏教組織)でも高僧の位置にある…。
瞑想法を教えると言って下さったが、「いずれ改めまして…」と言ったきり、いまだに行ってない。
何やら、ここは、国際色豊かなお寺のようだった。
夕刻、境内を散歩していると、なにやら涼しげな(暑い国ではそー思う)ザザーッという水音が…。しかも次々と。
で、コーナーを曲がると、うひょー!
なんと、20人ほどのメーチーが「水の部屋」の前(ってことは外だよ、外!)で水浴びを! 勿論、中にもいらっしゃるんだろうけど、一斉にって言うと、こうなるんでしょうね。(一斉にやる理由はワカランが…)
勿論、着衣のままだけど…。着衣ってのが、白木綿の薄物だから、水をかぶると「濡れたティーシャツ」状態より、さらにスゴイことになるのね。
あ、なんて罰当たりなんだ、おいらは。はぁー…。
夕闇迫って、周辺共々、急に静かになってくるワット・パクナーム。
と、急に腹が減って来るんだよなー。
「あ、イケネー!」
おいらは慌てた! 確か、お坊さんは、正午以降は…。
宿坊に戻って確かめると、そーだった。
「あなたは得度を受けてる訳じゃないので、食べても構わないよ」
って。でも、食べるものは…「ない」と。
「てのひらのシワが見えるようになったら寺を出てよい」
これがピンタバート(托鉢)に出掛ける時刻の決まりだ。
アラタノオーは大きくて結構重い(銅製=多分…)バート(鉢=お金の単位のバーツもここから来ている)を布にくるんで首から下げ、サンダルをはいた足を結構スタスタと早く進める。
既に、何日かやって慣れてきてるんだろう…。
道のそこかしこに、多くはすこし年かさの女性たちが立ち、お坊さんが来るのを待ち受けている。
お坊さん達は、そこあそこと、家の前に立ち、バートの蓋を持ち上げる。と、女性たちはかしずいて、金魚すくいのようなポリ袋に入れたおかずとご飯を恭しく入れる。
と、お坊さんはお経の一くさりを読むでもなく「どーも」と言うでもなく、そそくさと歩き始める。(タムブンさせてあげてるんだね=バックナンバー参照)
とある角を曲がった時のことだ。
あ、おいらは勿論、修行者ではないから、GパンTシャツ姿で、15メートルほど後を付いて回ってるのね。ま、なるべくご迷惑をかけないで見学しましょ、ってところね。
一人の…何か曰くありげな寂しさを伴ったうら若き女性が…アラタノオーの行く手に、うつむき加減で立ち尽くしていた……。
アラタノオーの足音が、スタスタと近付くと、女性はハッと顔を上げ、何やら伺うような表情を見せた。
そして、アラタノオーを瞬時見詰めると、「このお方でいい!」と確信するように表情を輝かせ、地に膝を着いた。
我がアラタノオーは不覚にも一瞬ためらいを見せた。
おいらには分かっていた。彼女は、「枯れた」お坊さんを待っていたのだ。
にも拘らず、アラタノオーは修行も浅く、また、枯れ切ってはいなかったのだ…。
彼女がアラタノオーに恭しく捧げたものは……僧衣と同じ色をしたプラスチックのバケツだった。
上部が色セロファンでラッピングされていて、中にも何やら入っていそうだった。
我がアラタノオーは、一瞬、バートの蓋に手を掛けかけたが、すぐ「こりゃ入る訳ないわな」と、手を持ち替え、右手を彼女の前に差し出した。
少しにじり寄るようにして、彼女はバケツをアラタノオーの腕に掛けた。
そして合掌するその手首は、驚くほど細く頼りなげだった…。
持ち帰ったご飯類は、本堂に持って行く。
と、デク・ワット(少年見習僧)が集めてくれる。
アラタノオーはバートを取り上げられても手に残ったバケツを指差し、「どうしたものかな?」と日本語で言っていた。デク・ワットはまずバケツを指差し、続いてアラタノオーの胸の辺りをつつくように指差した。
「そうか、持って行っていいのか…」
そう言ったアラタノオーは嬉しそうだった。おいらも嬉しかった。
宿坊にて。
次々とバケツから取り出されたもの……………
僧衣(と言ってもサフラン色の長い綿布)、黄色いバスタオル、黄色フェイスタオル、糸と針セット、洗剤、物干しロープ、ピンチ、石鹸、紐、ハサミ、ヒゲソリ、鶏の油(肝油みたいな栄養剤として瓶詰めされてる)、タバコ、木の枝に付けた20バーツ札……と、まぁ、ドラエモンのポケットみたいに、次から次へと…。
まぁ、お坊さんが日常生活で使うものがあれこれと、詰め合わされていたのである。
彼女は、何をする人ぞ。
そして、彼女の祈りは…?
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