『  タイの僧院にて 始末記  』


彼女は、何をする人ぞ。
そして、彼女の祈りは…?

ってのは、前号のラストなんだけど…。
これって、『次回につづく』ってイメージなんだってね。
おいら、実は、あれで終わりのつもりだったの。

ところが、何人もの方から「あれって何者?」とか「続きはどーなるの?」なんて訊かれてさ。
「あ、そーなんだ!」って気付いた訳。

あん時ってさ、『うおのめ文学賞』がマイブームでさ。
それで、つい、「余韻を持たせるラスト(夢童子作『罠(わな)』参照の事)って、いいよねー」なんて考えてさ。それでいきなり「彼女は、何をする人ぞ。そして、彼女の祈りは…?」なんだもの。参っちゃうよ、まったくー。

でも、まぁ、確かに先を急ぐ、ってゆーかー、字数を気にするあまり、いきなり夜になったり翌朝になったりとかって、ややこしかったり、分かりにくいところもあったようなので、今日は、ま、前回の続きもどきってことで。

『タイの僧院にて』ってゆーとー、タイフリークなら誰でも知ってる、ってほどじゃないにしても結構多くに人に知られてる、青木保さん(確か、国立民族博物館教授)の名著だよね。
(青木さん。この間のNHK教育TVでの「人間講座」でのタイ語、声調間違ってましたよ。)(なんて言っても読んでないって…)
若き日の先生が、タイをフィールドに文化人類学を勉強するってんで、得度を受け、お寺に入っちゃうんだけどね。
その書名をパクって、『daaw版 タイの僧院にて』とやった訳だけど、見事スベッタね。
だって、僧院にても何もないやねー。尼僧の行水と日本人僧侶の托鉢について行った、って話しだけだもんねー(そんな話し有ったか?って? もー、知らない!)

それにしても、いい経験だった……。

対岸は不夜城でネオンぎんぎらなのに、こっちはシーンとしちゃってね。
まだ、10時だって言うのに、もうみんな寝てんだもの。
詳しく数字を聞いた訳じゃないけど、いくつかの塔中・宿坊に、合わせて100人ほどの僧と20人ほどのメーチ−(尼僧ではない尼僧)、20人ほどのデクワット(少年見習い僧)がいるようだった。
アラタナオーの部屋は、8畳ほどの一間で、一角が仏壇になってる。そのすぐ前にアラタナオーが横になっていて、おいらは、さらに一段(っても、4センチほどしか落差はない)下に寝てる。何処も板間だ。そこに、木綿の布一枚を敷いて寝るんだけど…。
なんか、これがいいのね。
最初、ゴツゴツと背中やら肩やらが、板間に逆らって、「こんな所で眠れる訳ないじゃん」なんてブツクサ言ってる訳(心の中で)だけど、不思議なことにやがて慣れてくるのね。なんか、体が板に馴染んでくるってゆーかー。
で、「メーチーのSさん。日本で子宮ガンになって大きなしこりが出来てたのが、ここに入って暫くしたら、消えちゃったんだよな」なんて。この前、聞いた台詞を思い出したりしてる…。
で、「あああ…腹減った…」ってのも、思い出したりして…。

薄暗い内に起きだし、体を清める。そして本堂に集まり朝の勤行。
それが終わると庭に出て、手を広げ、掌紋が読めるのを確かめて托鉢に出る。
托鉢で捧げられた食べ物は、朝と昼の2回に分けて食べる。正午を過ぎると食事は摂らない。水は摂れる。
227の戒律があって、ま、いろいろとしちゃいけないことが、いーっぱいある訳。
あ、この間読んだ本に「坊主のクセにタバコをプカリと…」ってのがあったけど、タバコはお釈迦様の時代にはなかったものなので、戒律には触れないんだよー。
そのデンでいくとコーラも、ってんで、コーラを午後でも飲む人が居たな。正午を過ぎると、例え砂糖水でもいけないんだけどね。

さて、お昼ご飯を食べると、午後の勤行があり、そのあとはパーリー語による経典学習。
アラタナオーなどはもう、片っ端からカタカナでルビを振って、丸暗記してたな。

あ、おいらのご飯は、ポリ袋やバナナの葉っぱにくるんだものを、アラタナオーが本堂から持って来て下さる。それを部屋で頂く。みなさんは本堂で車座になってお食べになる。高僧は一段高い所に席次が決まっている。

それにしてもなんだね。
何処の馬の骨とも分からない奴をだよ(おいらのことだけど)、宿坊に泊めたりご飯を食べさせたり…。
いつまで経っても「帰れ」という訳じゃなし、「修行しろ」でもなく…。

ホントに懐が広いってゆーかー、親切ってゆーかー、無関心ってゆーかー…。

それでもおいらは3日でそこを出たんだよ。3日坊主とはよく言ったもんだ。
あ、違うか。只の押しかけ居候だったもんな。

あ、ところで、なんか忘れてると思ったら、
彼女は、何をする人ぞ。
そして、彼女の祈りは…?
の続きだよ!

これって、別に答がある訳じゃないのよ。
その後、その女性と付き合った訳でもないしね。
ただ、大きなサフラン色のポリバケツに、それはまぁいろんな物を入れたタムブンセット(あ? ナニゲに言ったのだけど、そう! あれはタムブンセットなのだ)をアラタナオーに捧げた女性…。

そうだ! って、また、突然、あらぬ事を思い出すおいらなんだけど…。
ってのは、いつか、パッタヤーでバイクを走らせてる時にね。
そう、夜も白々と明け始める頃だよ。
あ、おいらは、とにかく暑いから走ってるってゆー、あの、サイゴン(あ、ホーチミンか)の人々と同じノリで走ってたんだけど。
突然、行く手に遮断機のように手が上がってね。あ、ついでに言っておくと、タイ人はタクシーを止める時、手を上げないの。遮断機(って言うのも古いなぁ。要するに踏切のバーね)の様に横に手を出してね、ヒラヒラと振って見せるんだよ。

で、遮断機の主を見ると、これがキレイな女性でさ。ま、一目でそれと分かるGOGOガールなんだけど…。
「ん?」
と思ったけど、逆ナンな訳ないんでさ。バイクタクシーと間違えてんのさ。
で、どうせ暇だから、黙って停めてさ。
だったら、
「パイ・ワッ(ト)」 (お寺まで行って)
って。
「あ、その前に市場に寄ってちょうだい」
って。

市場で、大きなスイカと山ほどの竜眼を買って、おいらは持たされて…。
で、山のテッペンにあるお寺に行ったのだけど…。
それはまぁ、丁寧なお参りだったね。
ヤな仕事をしているヒトほど、「来世こそは…」ってお参りするんだろうな…。
それは美しいと言っていいほどの合掌の形と、敬虔な祈りだったんだよ。

でね。回りくどくなっちゃったけど。
その朝、アラタノオーが出会った彼女ってのも、同じ仕事のヒトだと思ったんだ…。


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